5月末にタイガースの優勝宣言をして、僅か3ヵ月後に、早くも、敗北宣言をしなければならないことに、内心、忸怩たるものがある。実は、オリンピック直前の巨人戦で３連勝するはずのところ、最後の２戦で、わざわざオーストラリアチームへの参加を遅らせて巨人戦に投げたウィリアムスが、同点打と逆転打をあびて勝利を逃がしたとき、今年のペナントレースは終わったと直感した。ところが、その後、ヤクルト→横浜→広島を相手に８連勝、勝率を5割に戻したことから、ひょっとするとミラクルがあるのではないかと、思い直した。しかし、絶対に落とせない８月３１日からの中日戦に２連敗したことで、万時休す。流石のとらキチも観念した次第である。

　今年は去年に較べて何がいけなかったのか。監督が代わった所為なのか。いや、断じてそれはない。星野監督でも同じ結果になっていただろう。そもそも、星野仙一はそのことを去年の時点で察知していたからこそ、監督の座を岡田に譲ったのだ。結果的には、戦力の低下が顕著なようだが、これは昨年と比較するからで、実は、昨年が”出来すぎ”だったのだ。星野監督自身もまさか優勝するとは思ってもみなかったと述懐するように、昨年は何もかも上手く行き過ぎたきらいがある。冷静に見れば、今年の成績がタイガースの実力に近いのかもしれない。そうは言っても、今年のタイガースの不甲斐なさについては、少し、犯人探しをする必要があるだろう。

上の表を見ていただきたい。タイガースは１試合平均で5.35点の得点をあげ、5.19点失点している。つまり、相手を５点以下に抑えないと勝てない計算だ。ところが、防御率５点以下の投手は福原と井川の二人しかいない。エースといわれる井川にしても防御率3.85で、とても去年の面影はない。しかし、投手陣が不甲斐ないのかというと、決して、そうではない。チーム防御率4.20はセ・リーグ2位の成績で、むしろ伊良部やムーアがいなくなった穴をよく埋めているといえる。問題は打撃陣だ。チーム打率.274というのはリーグ最下位の数字だ。昨年のチーム打率が３割近かったことを思えば、この落差は大きい。

　打撃陣で昨年より成績が落ちているのは、赤星、今岡、矢野、アリアス、藤本の５人だが、中でも矢野とアリアスの不振は大きい。打率が下がっている以上に、この二人はチャンスに打てない。特に、アリアスは昨年の迫力は全く見られず、チャンスで打席が回ってくると、先ず、裏切られる。９割がた三振だと考えてよい。他のチームの助っ人といわれる外人選手は皆それなりの成績をあげている。本塁打でいえば、ローズ41本、ウッズ39本、ラロッカ37本に較べ、アリアスの23本は見劣りする。打率は更にひどい。3割以上打っている助っ人は5人（それも各チームに一人ずつ）いるが、アリアスは.264だ。一方、三振の数は100以上が5人しかいないが、チャンと５傑に顔を出している。

　矢野の打撃も今年は期待倒れだ。昨年は、一時、リーディングヒッターになったこともあった。今年の.289は陰のＭＶＰといわれた去年とは較ぶべくもない。特に、今年はチャンスに打てない。打てばゲッツー打になる。これはアリアスの三振より尚悪い。矢野の打点は、113試合を消化した現在 53だが、これは２試合で１点稼げないという計算になる。つまり、チャンスで矢野に打順が回っても得点につながらないということだ。今年のタイガース不振の犯人を二人に絞るなら、恐らく、アリアスと矢野ということになるだろう。

岡田監督も、漸く、痺れを切らしたようで、中日との第２戦ではアリアスを外した。矢野については、実力のある選手なので未だにスタメンで使っているが、私が5月に提案したように、一時、休養を取らせることが必要だろう。アリアス、矢野に代わる若手を登用することで、タイガースの大進撃が始まることを期待して止まない。

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